若手育成特別養成塾【ヨシヨシ塾】

保育総合研究会25周年記念プロジェクト
若手育成特別養成塾
【 ヨシヨシ塾 】

趣旨

2024年保育総合研究会新規事業として次世代を対象にした若手育成特別養成塾(ヨシヨシ塾)を前厚生労働事務次官、現日本保育協会理事長吉田学氏をお迎えし開催します。
少子化が加速する近い将来において、求められる教育・保育及び保育制度の展望は非常に厳しいものと考えます。そのような中、保育制度を構築してきたスペシャリストの吉田学氏本人の意見を拝聴すること、また意見交換をすることは参加者の皆様にとって貴重な機会だと思われます。保育総合研究会としては、25周年記念の一環としての今期1年限りの養成塾です。皆様ご健闘を最後までお祈りいたします。

特別研修

第1回ヨシヨシ塾

日時:令和6年5月8日(水) 13:30~16:30
場所:日本保育協会本部
講師:元厚生労働事務次官・現日本保育協会理事長 吉田学 氏

内容
1.開講式
2.自己紹介
3.その他

事前課題1
全国保育協議会『人口減少地域における保育課題と対応 ~保育所・認定こども園等自らが取り組むこと』(2023/R5.1)を全部読む。その上で、①強く共感・納得したこと、②意見を異にしたこと・疑問に思ったこと、③分析・提言が不十分(中途半端)だと思ったことを書き出す。
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事前課題2
保総研『7プロポジション(2040年に向けて)』(2021)の「関心のある所」を読む。その上で、①強く共感・納得したこと、②意見を異にしたこと・疑問に思ったこと、③分析・提言が不十分(中途半端)だと思ったことを書き出す。ただし、5章の内容は提出物の対象としないこと。
内容はコチラ(リンク)
事前課題3

これまで「保育に携わる人」として、他人にお薦めしたいアイテム
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事後課題
5/8当日のやりとりへの感想・提案
内容はコチラ(リンク)

第2回ヨシヨシ塾

日時:令和6年7月29日(月) 13:00~16:30
場所:日本保育協会本部
講師:元文部科学事務次官・厚生労働省保育課長 義本博司 氏
講演「日本の教育の変遷と今後の教育の在り方について」

第3回ヨシヨシ塾

日時:令和6年9月27日(金) 13:00~16:30
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師:元厚生労働事務次官・現日本保育協会理事長 吉田学 氏

内容
1.2つのテーマ(事前課題)について一人ずつ発言+意見交換
2.その他

事前課題1
「当面する園運営の課題」として、以下のうちから1つ選んだテーマについて、「現状(思っていること)」「構想(やりたいこと)」「提案(やってほしいこと)」を整理する。
① 自園の建替え・改築、設備投資(ICTなど)
② 利用こどもの確保
③ 人材確保
④ いままでやっていない新規事業
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事前課題2
「10年後に向けた課題」として、以下のうちから1つ選んだテーマについて整理する。
Ⓐ 10年後に行っている事業の姿
Ⓑ 10年後の法人の姿
ⓒ 10年後の地元(市町村、学区など任意)の姿
内容はコチラ(リンク)

第4回ヨシヨシ塾

日時:令和6年12月10日(火) 13:00~16:50
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師:元厚生労働事務次官・現日本保育協会理事長 吉田学 氏

内容
1.プレゼン
2.学さんに聞いてみよう!
3.閉講式

事前課題
「ヨシヨシ塾から考えたこと」
自園の建替え計画、代替わり、地域づくりなど、何でも良いが、「単なる感想」ではなく「思い・考察・計画」などをA4一枚にまとめる。
内容はコチラ(リンク)

まとめ

「教育」「地域」「多機能化」「11時間開所」「子育て支援」など様々なキーワードが飛び交っていたが、全体を通しての大きなテーマは「10年後、さらにその先」だったように思う。全4回の研修を終え、地域によって抱える課題の違いはあるが、共通している部分も多いと感じた。ここでは、ディスカッションの中で出てきた課題や展望についてまとめていく。

抱える課題

○ヒトの課題
職員の採用、育成、利用子どもの確保が運営における目下の課題となる。どの地域においても確実に減っていく中でヒトを集めようとするなら、相応の魅力や強みを確立し、浸透(共通化)させなければならない。また、育成の観点からリーダーはもちろん、ミドルリーダーの育成も急務となる。ジェネレーションギャップは昔からあることだが、働き方改革の頃から価値観が大きく変わっているように感じる。若手職員や保護者との向き合い方について、私たちも見つめ直す時期に来ているのではないか。

○モノの課題
ハードの老朽化は必ず訪れる。あらゆる情報と手立てを活用しながら建て替えや修繕に備えていくことは必須なので、活用できる補助は積極的に手を伸ばしたいところだ。また、医療の発達によって医療的ケア児や要配慮児などは今後も増えることが予想される。施設の多機能化は重要な点であるが、ハードとソフトのバランスを勘案しながら、各専門施設と連携をこれまで以上に強化することが必要になると思われる。

○カネの課題
職責に対する報酬や物価高騰対策を含むあらゆる補助や加算については引き続き声を上げていくとして、人口が減少していくことを念頭にバランスを調整していかなければならない。公定価格に照らすならば、0歳児の4月入所数の減少と途中入所までの間の人件費は大きな課題となる。園の事業だけで運営が困難になるようなら、園以外の事業への参入による利用者確保を検討することも必要だろう。自治体との調整や折り合いは今のうちからやっていくべきと考える。

○情報の課題
AIの時代へと変化しつつあるが、まだSNSが優位だ。炎上からの袋叩きはどこでも起こりうるため、発信の仕方と情報の保護、働き手のメディアリテラシー育成には力を入れていきたい。だが、その前段階として、本務である教育・保育の土台を固める必要がある。利用者やファンを獲得するためにも先んじて見える化に取り組み、どんどん変化していく情報戦線を制していきたい。攻撃は最大の防御。

未来への展望

人口そのものが減っていくことを考えると、現在の規模を維持することは難しく、あらゆる地域で需要と供給のバランスが崩れていく。園としては多機能化や定員の減少などできることもある(焼け石に水だとしても)が、吉田さんの「今後、保育士は増えることはない。今いる働き手が辞めずに済む方法や、多職種からの転職も視野に入れる」という考えは的を射ており、保育業界のみならず、人口減少時代のスタンダードになると思われる。民間の施設として、淘汰の波にのまれずに生きるためには盤石な基盤と情報が不可欠だが、同時に情報の活かし方も知っておかなければならない。

おわりに

若手育成特別養成塾には全国の様々な地域から参加者がいた。普段は交わることの少ない地域、特に過疎地と呼ばれる地域の実情は壮絶なものだったが、話を聞いていく中で、それは「いずれ来るかもしれない未来」であると感じずにはいられなかった。
今回参加したことで、それぞれの中で改めて見えた課題は多いはずだ。それは20年先を見据えて今後取り組んでいきたいと考えていたものかもしれないし、〆切が近づいている園内研修の資料作成かもしれない。いずれにしても、少子化が進んだ社会を歩んでいく上で、自法人や自分にとって必要になってくるものだと思うし、奮起する機会となったことに違いはない。情報の優位性を最大限活かしながら、これからも地域の中で共存できる組織を目指していきたい。

改めて、私たちにたくさんの時間を割き、導いてくれた吉田学さんと義本博司さんに最大限の感謝を申し上げ、まとめの項を閉じる。

令和7年1月10日
ヨシヨシ塾事務局
菊地渉

参加者一覧

氏名 自治体 園区分 役職
相馬 亜季 青森県青森市 こども園 副園長
今野 眞洋 秋田県にかほ市象潟 こども園 副園長
伊東 俊樹 新潟県長岡市 こども園 園長
菊地 渉 茨城県猿島郡境町 こども園 園長
東ヶ崎 拓樹 茨城県北茨城郡茨城町 こども園 事務員
仲田 臨 茨城県小美玉市 こども園 事務員
青木 恵里佳 東京都荒川区 保育園 副園長
田口 侑平 神奈川県横浜市 こども園 園長
勇 まり子 三重県鈴鹿市 保育園 副園長
永田 郁弥 大阪府大東市 こども園 副園長
髙橋 珠希 兵庫県姫路市 こども園 副園長
舘 潤也 広島県福山市 保育園 事務員
吉里 由子 徳島県徳島市 こども園 教頭
髙月 善徳 大分県速見郡日出町 こども園 園長
松永 和孝 熊本県熊本市 こども園 園長
萩嶺 淳昭 熊本県水俣市 こども園 園長